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コラム

石井淳蔵先生の好奇心 好評連載第2回
「25銭のカレーライスでつながる小林一三と中内㓛」

2016/12/08

事業は大衆を相手にした
事業でなくては成功しない

第1回連載の「大正浪漫」に引き続き、第2回連載の今回は、その大正期に活躍し、今日のターミナルシティと娯楽の礎を築いた「小林一三」についてご紹介します。
小林一三と聞いても若い人にはピンとこないかもしれませんが、「阪急百貨店」や「宝塚歌劇団」を知らない人は少ないのではないでしょうか。この2つを創設したのが、小林一三です 。

小林一三が行った事業はいずれも、「事業は大衆を相手にした事業でなくては成功しない」という考え方のもと行われました。そのエピソードを2つご紹介いたします。

より良くより安く、多くの人にスピーディーに

1点目は、阪急百貨店にまつわるお話です。開店直前に打ち出された新聞広告のコピーには「どこよりもよい品物を、どこよりも安く売りたい」と掲げられたそうで、その思いは阪急百貨店の食堂にもいきわたっておりました。その食堂にはカレーやオムレツなどの洋食を中心に提供していたのですが、なぜ、洋食なのかお分かりでしょうか。洋食なら、和食よりも、より良くより安くより多数の人にスピーディーに提供できるからです。一見些細なメニューにまで小林の思いと知恵が込められ、スタッフ共々に実現されていたのですね。

一人一円で利益を出せる劇場に

2点目は、大正期につくった宝塚大劇場のお話です。小林の最大の希望は、「芝居の実質を低下させずに国民の希望に合わせた」観劇を提供するというものでした。そこで、消費者の生活状態や生活感覚から事業のありようを逆算し、大衆が観劇に捻り出せる額は、一人一円が精いっぱいと踏み、当時の一円でしっかりとした芝居を見てもらうには、収容力の増加を行わなければとの考えから、1,500人を収容できる大劇場をつくったのです。しかし、問題はその劇場で利益を出さないといけないということ。いろいろ考えた結果、興行時間の短縮、窓口の従業員の削減、常に観客に劇場に来てもらうために、冷暖房サービスや飲食サービスの提供・・・。

小林は、大衆の購入できる金額からビジネスのありようを決め、大衆目線のビジネスを展開していったのです。

そして中内功へ・・・

さて、同じころ一人の少年が、母親に連れられて阪急電車に乗って阪急百貨店に行き、食堂で25銭のライスカレーを食べるのを楽しみにしていました。のちにダイエーの創設者となる、中内㓛です。「『大衆相手の日銭商売』という考え方で、鉄道を大阪から宝塚、神戸へと延ばし、沿線を開発し、ターミナル百貨店をつくり、その食堂でカレーを売り、宝塚歌劇団までつくられた」と、思い出と共に小林一三の偉業を語る彼もまた、小林の考え方に影響を受け、大衆目線の事業を展開していったのです。
次回は、中内㓛のお話をいたしましょう。

プロフィール

石井 淳蔵 [学校法人中内学園 流通科学研究所 日本マーケティング学会会長]
1970年神戸大学経営学部卒業。75年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。同志社大学商学部教授から、89年神戸大学経営学部教授、経営学研究科教授、経営学研究科現代経営学専攻長を経て、08より年流通科学大学学長(神戸大学名誉教授)。著書に「営業をマネジメントする」(岩波書店)、新訳「事業の定義」(碩学舎)、「マーケティングを学ぶ」(筑摩書房)、「寄り添う力」(碩学舎)など多数。
iCL(石井マーケティング研究会)サイトはこちらから>>

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