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コラム

石井淳蔵先生の好奇心 連載第1回
「大正浪漫」

2016/10/04

現代文化の原点、大正期

大正期を題材にしたアニメや舞台が若い人に人気だと聞きます。へえ~と思って、大正期のことをネットで調べ始めました。「大正浪漫」の話がいろいろと出てきます。

銀座にカフェができ、銀ブラという言葉が生まれ、「今日は帝劇、明日は三越」というコピーが生まれた時代です。東京の中心は浅草六区。そこでは、チャップリンの映画や浅草オペラの公演が人気を集めました。サントリーが赤玉ポートワインの有名な広告写真を出した時代でもあります。関西では、宝塚少女歌劇団が誕生し、東京で公演をしています。バスガールを筆頭に女性のカタカナの職業が生まれ、女性が社会進出を始めたのもこの頃でした。
これまでになかった華やかな、庶民のための風俗がこの期にいろいろと登場しています。少し、不思議な感じがしませんか。

というのは、大正の前後の時代、つまり昭和戦前期と明治期は、どちらかというと軍人や役人が威張り散らし、男尊女卑で家父長支配の時代だったからです。上からの権威が強く、自由が抑圧され、息が詰まりそうな時代という印象です。その狭間に、こんな自由で闊達な風俗が花開いているからです。
井上章一さんは、自身の著作『美人論』で、この頃、「美人」の定義が変わったのではないかという説を唱えています。美人・不美人の話であっても、「何が美しくて、何が美しくないのか」という「美の基準」が変わるというのは大ごとです。その基準が変わるというのは、社会の感性が変わることに他なりません。それが変わると、文化も風俗もすべて変わります。ある意味、平安から江戸へと続いてきた日本の文化伝統が、この大正期に一つの区切りが入ったということなのかもしれません。現代のいわば原点が大正期にあるのかもしれません。

こんな風に時代の流れを見ると、明治~大正~昭和~平成という歴史で教えられた平板な時の流れとは違った、時の流れを感じることができます。現代の若者が、大正期になにか懐かしさを感じることがあったとしても、不思議ではないのかもしれません。

プロフィール

石井 淳蔵 [学校法人中内学園 流通科学研究所 日本マーケティング学会会長]
1970年神戸大学経営学部卒業。75年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。同志社大学商学部教授から、89年神戸大学経営学部教授、経営学研究科教授、経営学研究科現代経営学専攻長を経て、08より年流通科学大学学長(神戸大学名誉教授)。著書に「営業をマネジメントする」(岩波書店)、新訳「事業の定義」(碩学舎)、「マーケティングを学ぶ」(筑摩書房)、「寄り添う力」(碩学舎)など多数。
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